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プログラムI-E

様々な国際事情を描く「世界の物語」プログラムです。
今年は何というか、そういうテーマの作品が他プログラムに散ってるような気がしてならないですけど…。

テンプレ

「フィッシャーマン」
マジックリアリズム全開のメキシコ映画。
いきなりメキシコらしーい葬式シーンから始まります。で、何やら瓶を抱えたお爺さんが登場。ボートに乗って海へ漕ぎ出しました。沖に来たら瓶を開けて、中の餌を釣り針に…って、写真ですよコレ。シャンデリアが映ってる写真。
ほどなく、釣り糸に引きがあってリールを回すとシャンデリアが連れてました。魚拓を餌に本物が釣れちゃいますみたいな、何とドラえもん的未来グッズな展開。
で、瓶の中のブツを全部釣り上げて帰宅すると、シャンデリアを部屋に飾り、正装して、女物のオシャレな靴を玄関先に置きます。やがて夜になると、あばら家の戸をノックする音が…つまりこれ、死んだ奥さんが記憶として帰ってくるというのをマジックリアリズムで表現してるわけですな。
ラスト、翌朝になって爺さんが瓶を物置に戻しに行くと、大量の瓶が並んでいて…この瓶のラベルが女性の名前らしいんですが、同じ名前なのか違うのかが読み取れなかったです。そこ次第で物語の意味合いが相当変わるんですけどね(笑)。

「ゼブとフォトフィッシュ」
ウガンダ作品ですが、全編英語です。教育映画で、非常にわかりやすい構成。
親父さんが釣った魚を、毎日近所の商店へ届けに行く主人公のゼブ少年。母さんがマラリアでクスリも買えないのに、どうして魚を…と不満気です。実はゼブの一家はこの商店から借金をしていて、毎日少しづつ魚で返済してるんですね。
ある日、すんごい大きな魚を手に入れたゼブは、いつも通り届けに行かずに通りで売ろうと必死に声をかけて回ります。苦労の末に売れた魚は、実は日々の返済額より多かった(ここで「魚の代わりに」と自転車を持っていかれるエピソードがあって、返済額がわかる仕組み)。彼は商売の才を発揮して、借金を金銭払いにした上で、余ったお金でマラリアのクスリを買ってきたのでした。おしまい。
農家だった二宮金次郎が畑を耕さずに薪を背負っているのは、薪を街で売ったほうが儲かったからだそうなんですが、似てますね。商売の立身出世の原理はどこでも同じって事か。
ウガンダでもこういう平和な作品が増えてくれることを望みますよ。

「オデッセイズ・ギャンビット」
アメリカ作品。カンボジア戦争の遺児らしい、ホームレスのギャンビット。50代後半くらいのオッサンです。チェスの腕を頼りに、路上の賭けチェスで生きてます。チェスの技、流儀の解説と並行して、彼の置かれた悲惨な状況が語られる。アメリカの戦争の遺児なのに市民権はなく、フードスタンプももらえず、普通のアメリカ人に対してすごいアドバンテージを取られてる。つまり「人生の勝負」って意味では、アメリカ人に対して飛車角金銀落ちの状態で戦ってるんですね。
だからこそ、ゲームのスタートが平等なチェスにこだわって生きてるんじゃないか…作品テーマはそういう部分に軸足を置いてますな。

「カムトゥ・ハールム」
アイスランド作品。今まで映画祭で上映されてきたアイスランド作品の共通項っぽい、静けさがあふれる作品でしたが、パラノイアがテーマだから緊張がえらい持続します。
人間性に問題があって職場や家庭から拒絶された男の追い詰められた精神状態を描く作品。ドイツやオーストリアなんかもこういうテーマが好きそうですけど、本作は静かに静かに、じれったいほどゆっくりと話が進んでいくところがミソで、「社会」の話ではなくあくまで「人間」の物語に仕立ててある。
プロテスタントの国らしいテーマの提示だと思います(これは前の「オデッセイズ・ギャンビット」にも言えますが)。

「トランジット」
これがねえ、オールナイト上映のさなか、近隣の観客が次々と寝始めた罪深い入眠誘導作品でしてね。オイラは大量にコーヒーを準備して望んだので無事でしたが(苦笑)。
構成が確信犯で、何も説明を入れずにいきなりどこかの山の中。人間は手のクローズアップかロングショットのみ。つまり顔は出ない。徹底して観客の興味を引く材料を排除してます。そういう画面で、男たちが金属探知機を持って山の中を歩きまわり、地面を掘り、また歩き…。
光景が変わるのは、彼らが掘り出しているモノが頭蓋骨だとわかった瞬間から。衣服も出てきます。ウール地のカチッとした制服です。メダルも出てきて階級がどうだとか言ってる。掘り出されるブツから、やがてナチスの装備だということがわかりはじめ…。
ラストでようやく、字幕で経緯が説明されるんですが、5年ほど前に発見されたスェーデンのナチス義勇兵の遺骨捜索なんですね、これ。戦後になって存在自体が忌み嫌われるようになった他国のナチス義勇兵。望まれない学術調査の、徹底した冷たさ、無表情、そういったものが映像手法に込められていたんだと思います。
何となくやるせない気分にさせてくれる、けだるい戦争ドキュメンタリー。

「ソフィアの門限」
今年のSSF自殺コメディ二本目。こちらも冒頭が秀逸。
女性からの電話を、バスルームで受けてる男が映ります。「もうあなたしか頼める人がいないの! お願い!」とか言われてる。男はひとつ返事で引き受けると、電話を切り、風呂の中で、リストカットしたばかりの手首に包帯を巻き始めて…ゴキゲンなBGMが流れ始めて映画スタート(笑)。
結局、姪っ子の子守を引き受ける事になった主人公ですが、めっちゃ口うるさい可愛げのない女の子(推定小学5年生)と夜のひとときを過ごさなけりゃならない。ボーリング場に行き、ダイナーに行き、街をうろつき…小さなドラマの積み重ねで、彼女の母親(つまり主人公の妹)がつらい状況にあること、主人公はヤク中のダメ人間として妹から縁を切られた過去が見えてきますな。
数時間の散策で、すっかり仲良くなった二人が家へ戻って、母親に会うと…顔のアザや、テーブルに置かれた裁判所の接近禁止命令書なんかで、セリフがなくても大体何があったか観客に想像がつきます。兄妹が会わないでいるうちに、最悪のダンナを引いちまったらしい。いろいろ含みのある演技で、兄と妹が和解して大団円…。
手堅いハリウッド短編ですね。ある程度シナリオが良くて、子役を使えばハズレる事はないっていう典型みたいな。癒されたい時に観るのがオススメの、ちょっといい映画。

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