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各国プログラムまとめ評

最終日の各国プログラムは、けっこう量があってヘヴィでした。
以下、見た順に随時更新。

●アジア
『記憶が聞こえる』
枠組みはSFなんですが、中身は恋愛モノ。新しき皮袋に古い酒の典型です。
冒頭に、想い人を失った主人公へ《記憶銀行》から電話がかかってきます。死んだ想い人の残した記憶を相続した旨の電話。その状況を納得し、受付の電話番号をメモるまでをワンカット長回しで撮影してます…観客を納得させるの、無理でしょーそれ! 冒頭シーンの終わりには主人公の「記憶を預けるなんて、科学が進歩したのね」なんてセリフまである割には、メインストーリーが固定電話ばっかりの世界じゃないですか! 物語的には従来から相手の日記とか手紙とか、音声テープなんかの小道具で済ませてきた部分に《記憶銀行》は乱暴です。観客を納得させるためには冒頭のカットを小割にして、銀行の総体・ビジネスシステムを観せ、観客に物語世界へのリアリティを与えるのが必要ではないかと思います。SFアウトサイダーがSFを利用する際の、最悪の使い方でした。
映画全体としてはどうだったのか? まあ普通の韓流でしたが…韓国を理解する上でキリスト教の影響は無視できないというのを強烈に実感しました。宗教的浄化装置としての水、雨、川、涙…明らかに中国的な意味の水とは違っていました。あと、主役の女優さんが麻生久美子に激似だったのが、可愛くて良かったかな(笑)。麻生久美子自身はワールドワイドの活躍で、もう可愛いだけの女優ではなくなっちゃいましたけど…。

『ティット・フォー・タット:報復への恐怖』
タイのシャーマニックなホラー。4編構成オムニバスの一編だそうです。学校でクラスメートからいじめ抜かれた少年が呪術を使った逆襲を決意。強烈な呪術グッズを作って反撃に挑むが…というのが前半のメイン。後半は暴走した魔力が惨劇を巻き起こしていきます。南伝の仏教国だけあって、罪のある人間に対して決して無罰的には済まさない点が、いかにもですね。
スピーディで色のメリハリがあり、人物が浅い割には場にいる人物構成のバランスがいい。この監督は案外、いい群像劇を作りそうです。

●オーストラリア
『クリケットの英雄』
冒頭から真っ当な先住民ネタで来ました。クリケットに夢中な息子を止めようとする父。父子はアボリジニですが、母は白人という家庭です。いろいろ父子の接触を通じ、実は19世紀にアボリジニのクリケットチームが英国女王の前で素晴らしい試合をしたという歴史を知る、という展開。ここで「自分のアイデンティティを何に求めるか」という深いテーマが立ち現れてきます。父が態度を変えるラストはなかなか感動的でした。

『9マイルの向こう側』
バスに乗って何年かぶりに自分の生家へ帰ってきた男。庭に置かれた車は事故でクラッシュしたようで、また男の弟は母親に面倒をみてもらってる車椅子生活。このあたりで何が起こったか観客には大体察しがつきます。弟の口から、兄が刑務所からわかるダメ押しで、兄弟の亀裂が非常に深くて決定的である事が察せられます。兄はいろいろ打開できるよう努力するんですが、弟との溝を埋めるには至らず…兄の最後の行動が、いかにもオーストラリア的でカッコいいです。

『裁き』
この映画の登場で『フォーン・ブース』は不要になったかも。携帯電話版・ショート版という枠組みで『フォーン・ブース』のスリム版・ブラッシュアップ版になってます。残業中、煙草を吸いに外へ出たビジネスマン。別の男が近づいてきて話しかけるんですが、だんだん話が変な方向へ進み始める…「子供を授かるってのは神秘的な事だ」とか言い出したあたりで、そのルックスからネオナチを想像するんですが…あーやっぱりそんな展開になりますか…衝撃のラストが、なかなか計算されてます。

『かしこいにんげん』
ほぼワンセット(?)アニメ。一枚の絵で、マンションの自宅から会社の自室までを描き切ってる画面構成がうまい。そんな世界で毎日同じ生活してるんだからストレスも溜まります。PCが、コピー機が壊れるように人間も壊れる。そして男はいつもマンション前にいるホームレスの助言に従って旅に出るのです…心が洗われる場面で「世界が違って見える」というのを、本当にアニメのタッチを変えて描いているのが秀逸。

『ジャンプ』
高級っぽいホテルのベランダから飛び降りようとしてる女性。世界は近未来、センサーが発達し、許可なく他人に触れる事もできなくなってる時代。さてそこへルームサービスの女性がやってきます。な~んとゲストへ直接身体が触れないよう、金属製のマジックハンドつけてます(笑)。窓際の客を見つけていろいろ説得し、リラックスさせて…この作品、微妙な小ネタが凝ってるのでSFとして飽きさせません。物語がバカっぽくて軽薄そうに見えても、SFはもっと違うところで勝負するんだから。

『悲しみの詩』
先住民の葬式。仏様は若い男です。みんなが嘆き悲しむ中、白人男性が訪れて…あ、路上で止められちったよ。どうもこの白人男性が仏さんの死の原因と思われてるようです。いろいろあって何とか棺の前に立てた来訪者ですが…なんか庭で親族と話してたお父さんが怒りまくって入って来たよ…様々なレベルの怒りが錯綜する、先住民たちの演技がナチュラルでよかった。

『エロイーズの物語』
パンフによれば第一次大戦後の欧州が舞台だそうですが…まあファンタジー的な舞台だよなあ。石畳とレンガに囲まれた夜の裏路地。一人の少女がバイオリンを弾きます。この娘がむっちゃ可愛くてね~! キャラで引っ張れる作品は得です(断言)。んでバイオリンの弦が切れた時、そこへ名刺が飛んでくるわけですよ。名刺の裏には「バイオリンを直してあげるよ」とメッセージが。翌日行ってみたら、そこは何と発明家の…いやマッドサイエンティストの家でした。この発明家、少女を映画のカメラみたいな装置の前に連れて行くと「撮影させてくれ」と頼むんです。彼の話によるとこれは被写体を物語にする装置。実際にネコで実験すると、銀板代わりの本にネコが閉じ込められちゃう。ネコの物語ができあがったわけです。さあ少女エロイーズは報われない現実を捨てて、理想の姿を物語に閉じ込める気になるか…? というのがお話のメインのテーマ。人間とは、人生とは…ってものを考えちゃうと同時に、発明家が他にも少女をいろいろ物語にしてるのがわかってからは、青髭的なテーマも絡んできます。最終的にエロイーズは物語になる決断をするんですが…残念ながら彼女の物語は彼女の生きてきた「そのまま」でしかなかった…。
本作は様々にモチーフを広げられるし、描き足りない部分も多々あります。是非とも長編化して、もっともっと多彩な展開を盛り込んで欲しいなあ、と思いました。

●ジャーマン
『ピーターの法則』
社会学者の著書「ピーターの法則」。昇進すればするほど無能になるという法則を逆手に取って、無能な従業員がトップへ上り詰めるまでを描いた人形アニメ…。

『原子くんは怖くない?』
原子くんが、原子力がいかに必要かという事を説明してくれます(マジでそんだけ)。都合が割るいとこは思いっきり答えなかったりごまかしたりしますが、基本的には気さくでいい奴です。

『ジャーマン・エア・フォース・ガイ』
ドイツ空軍の人形を集めよう! こ~んなに凄いテロリストごっこができるんだぜ! …っていうCM。とりあえず彼らは、テロを防ぐためなら民間人の巻き添えは気にしません。

『ザ・バンジーズ』
ウサギの子供4匹のクレイアニメ。宿題やってないのをどう切り抜けるかという不毛な相談がメインで、まあ黒いです。

『サイバー』
3×3×3メートルくらいの直方体空間の内部だけ、バーチャルにいろんなモノが流れてくるっていう装置の2Dセルアニメ。ワンカットで固定アングル、なのでどういったモノが流れて来るかが見せ所です。「同じ事を繰り返すようで、少しづつ発展してるんですよ」ってのを、絵と共にバッハのカノンで聞かせるあたり、さすがはクラッシック音楽の国です。

『大自然』
バカ丸出しの3D。無駄に精細で驚きました。ドイツ人のやるバカは限度がなくって侮れないんだよなあ~。大自然の中での素早すぎるネズミの行動をスローモーションで見てみたら、メスの取り合いしてるオスが2匹、マトリックスばりの死闘を繰り広げているという…ま、予告でも毎回場内にクスリと笑いが漏れてたんで、こんな内容だろうとは想像ついてましたが。中身はないけど(ないから?)妙に気持ちいい作品です。

『赤ウサギ』
3Dが続く。割とポリゴン荒目ですが、動きが自然でビックリです。部屋(通常の人間の)から出られないほど巨大なウサギを飼ってる男が、マンション上階の女性と出会ってしまい、ウサギの存在を隠そうと…オチが途中でバレるんですが、長く引っ張る話ではないし動きで楽しめるので、気になりませんでした。

『アンハルター駅で』
モノローグ+シュール系の人形アニメ。この事や、セットの不潔感などから『ストリート・オブ・クロコダイル』を連想させます…とてもその領域ではないけれど。SSF#1で上映された『在来線の座席の下に住む男』あたりに近いコンセプト・技術レベルだと思います。

『ポスト!』
2Dアニメで、「検閲」「情報操作」の是非を考えさせてくれた、楽しく、なかなかに深い話。秀作です。

『部品』
かな~り笑えた! これこそがドイツのショートフィルムだ! …って感じ。『部品』というタイトルですが、原題はアウトソーシングとなってましたから、やはり「外注化」という会計学によって企業の本隊業務にメスを入れる昨今の風習を皮肉ってるんでしょうね。家事の効率の悪さを理由に奥さんが「解雇」され、実家に帰らなきゃならなくなるとういう…ここで場を仕切ってるのが父ではなくPCを駆使する長女だ、ってところがドイツらしい感じ。

『「われわれ」の土地』
「われわれ」がカッコ付き。なぜなら主人公はロシア人の不法滞在者だからです。
ここで思いっきり個人的な話。オイラが昔行ってたフィリピンパブが、数年前にロシアンパブになっててビックリした事があります。店主のお爺さんはクリスチャンで、人助けの目的が第一でフィリピンに出向いては自分でホステスさんやボーイくんをスカウトしてたそうです。それをロシアに切り替えた。場所はウクライナ地方。チェルノブイリのある場所ですな。あの土地の人々は、想像を絶する状態に置かれてるような気がします…と、余談ばっかり長くなりましたが。
本当に、世界中で、ウクライナの人たちは大変な苦労を強いられてるんだな~、というのが実感できる本作。「息子が7歳になるのに小学校へ入れられない」という、身分を偽ってギリギリの生活をするロシア人(しかも故国では医師だったらしい)の苦悩が肌身でわかります。いや正直、途中で少し泣きました

『ワイアー』
すげえ~! 枕にちょっと無駄話すると、公共住宅政策って言うのはだいたいその国での住宅を規格統一しちゃうわけです。日本の場合は高度成長時代に住宅公団が始めた「2DK」「3DK」などの間取り設計が、今はどこでもスタンダードになっちまってる。日本の場合、住宅は同じような間取りが密集した、団地化・マンション化の方向だったわけですね(長屋の近代化とも言えるが…)。
それがドイツではどーなのか! …というのが一目でわかる、ドイツの一戸建てが「団地」である事をわからせてくれた実写アニメーション作品。間取りどころか家の形や庭の大きさまで画一化しているので、同じアングルで撮影した住宅の写真をどんだけ差し替えてもシルエットは変わらない。外装や庭の木々が変化するだけです。これを2分に渡って延々と繰り返す! いったいどれだけ戸建て住宅を撮影したんだ…とビックリしました。個人製作のインディペンデント作品だと思いますが、美術協力・ドイツ市民/規格・ドイツ(笑)。

『モトドローム』
超ミニサイズのモトクロスレーシング場のドキュメント。なんたって、カーニバルと一緒に移動して、直径10メートルくらいの木造の小屋を建てて、そこでレースやっちゃうんですから! 当然地面を走るなんてのは不可能なんで、遠心力を利用して側壁をグルグル駆け回る。観客は小屋の最上部からレースを見下ろすという仕掛けです。でもまあ、結局映画としてはそんだけなんですが…。

●UK
しまったあぁぁ~!
致命的な事に、パンフを札幌に忘れてきてしまった!
タイトルがわからないのはまだいいとして、2作品だけどうしても作品そのものを思い出せない…結局 mixi の SSF コミュで、久保氏に教えていただきました。お手数かけました。_o_

『STREAM』
筋肉と、流れる汗。筋肉と、流れる汗。筋肉と、流れる…あーそればっかりかよ! って思ったら、パンツをアイロンがけしてたようです。スチームで暑いのか。

『Alex and her Arse Truck』
パブで自分のシミパンを売って稼ぐ女。彼女の変態なフィルムを見てマスターベーションする恋人。まあ若干スカトロの入った変態な人間模様が繰り広げられ…って、こういう非ポルノグラフィックなのって何か意味があるんでしょーか。エンディングは無駄に青春してて、いいかも。

『The Animal Book』
途中までは人形アニメですが…なんと、題名通りのアニマルブック=動物絵本が登場してから様相が変わってきます。本の中の絵がどんどん街へ飛び出してくるんですが、紙に描いた絵そのまんまがコマ撮りでアニメーションされる…これは! これは英国のお家芸である『フラットワールド』方式の上手な復活です! この路線、もっと突き詰めて楽しい作品をいっぱい作って欲しいなあ、イギリスには…。

『WINDING DOWN』
老いた時計修理工。年のせいか、お得意さんからの時計修理がだんだん厳しくなってきてます。で、息子の薦めでとうとう店を閉めてしまいました…あれ、終わり? 題名通りのゼンマイ切れ。

『Homeless Me』
監督来場。東京のダンボールハウスの住人と一緒に寝起きして、彼らの生活に溶け込んだドキュメンタリー。見慣れた風景が英国人のカメラによって異化されるのかと思いきや、まあ普通にホームレスの生活が展開されてました。うーん、外国人には面白いかもしれないけど…太極拳の練習や祭り太鼓の練習が行われる、河川敷の朝の光景はちょっと新鮮。

『気象予報官』
これ、F-Bの奴とかぶってますね…まあ2回観れてハッピーでしたが…。

『Dying Backwards』
画面には焼け残った車が。煙がどんどん車に吸い込まれているので、早回しの逆回しだと即座にわかります。あ、消防隊員がホースで水を吸い取ってる! 燃えた燃えた! …ってそんだけ?

『Subterranean Scene Filter』
昨年フィルムメーカー部門で好評だったらしいサイモン・エリスのドキュメンタリー。NYの地面から立ち昇る湯気を、マンハッタンに引かれたパイプに沿って、様々な場所でひたすら撮り続ける…ってそんだけ?

『ソフト』
冒頭が、携帯動画の映像で人気のない裏路地でのリンチ場面を映し出すんですが、臨場感でまくりです。優柔不断で暴力を奮えない父が、路上で不良に絡まれた。さあここが決断の時…いや決断しません。かわりに息子がキレて不良をタコ殴り…ハッピーエンド(笑)。ジャーマン・プログラムで『大自然』を観た後だからなあ。人間のコミュニケーションの不全性に想いが行ってしまうなあ(笑)。

●カリフォルニア
『ストラック』
ナーイス! これぞハリウッド味の正しい使い方! 道で見かけた女性に一目ぼれした主人公。ズッキューン…という衝撃が胸に走ったと思ったら、ハートが射ぬかれていました。もう、本当に長さ1メートルの金属の矢が胸を貫通してんの(笑)。恋する男のちょっと不便な日々を、矢というアイテムでわっかりやす~く消化吸収してしまいました。偶然再会した女性に矢を抜いてもらってハッピーエンドに至るんですが、そこで犯人たる天使の姿が…ヒゲ面にサングラスのパンクな男でした。街角で恋する人々へ矢を向け速射するエンディングは、すげーカッコよかった。天使モノはバリエーションが尽くされた感があるんですが、まだ正攻法でこういう手があったか! と、心地よく膝を打ちました。

『テレス・ノアール(黒い土地)』
ベルギー製作のカリフォルニアショート出品作。幽霊屋敷モノの変種としては秀逸。コンペだったら投票したなあ…あ、無敵ショート『ジェニー・マリー』があるから厳しいか。本作は炭鉱を幽霊屋敷とみなして展開する点がアイデア賞モノで、さらにセリフを排して展開するシンプルさ&「幽霊」たる「炭鉱の中を徘徊する裸体の女性」の美しさとエロティックさ(って姿がチラチラ見えるだけなんですが、背景とのコントラストが素晴らしい)…見事としか言いようのない、上質なゴーストハウス・ストーリーに仕上がりました。こういう古びた物語は、新機軸を打ち出せるかが勝負だと思うんですが、短編という枠組みの中では無駄なく、飽きさせず、必要な要素はキッチリ盛り込んで、完全でした。

『ドリームタイム』
同じくベルギー作品が続く。管理社会モノです。舞台を未来世界とはせずに、第一次世界大戦後あたりのレトロな(カフカ風の)テクノロジーに留めてあるところがミソで、このあたりは『未来世紀ブラジル』よりもビジョンが明確です。ただ、予算のなかさらか、対置される「夢の世界」がちょっとショボい(ただのパーティー会場)。このふたつの世界を行き来する装置が「赤い砂」。さすがはベネルクス3国。ドラッグの表現に禁忌感が微塵もありません(制度的に禁じられてるだけ、ってスタンス)。この赤い砂を目のあたりにパラパラっとふりかけると夢の国へ行ける(笑)というお手軽さもイイ。これ、当然ヨーロッパの砂男伝承を意識したアイテムで、20世紀初頭の世界観に重ね合わせる事で「砂男 vs 管理社会」→「テロリズム」という流れに持っていきます。この論理展開の妙が、21世紀の観客を深く引きずり込んでいく、映画自身が砂男的な感じでした。

『ジェニー・マリー』
アイルランドからの出品。ずるいです(笑)。少女モノの超正統派。戦後直後の飢餓状態のダブリンを、推定7歳の少女ジェニーが裸足で歩く。冷たい石畳の感じが、もう泣けてきます。この手の話の定番で、ジェニーは不幸という概念そのものを持ってない。自分の境遇が辛いと思わないので泣かないし、澄んだ目(ある意味、死んだ目とも言う)で、親や、教師や、近所のおばさんをじっと見詰める。この子役の演技に神様が降りてきてまして、何というか『みつばちのささやき』のアナ・トレントのアイルランド版です。その上で迎えるクライマックスの、教会が配るパンに飢えた市民が群がるシーンが圧巻で、半世紀前の、まだ人に節度のあった時代の雰囲気とか、それが崩れていく有様とか、群集の演技が素晴らしい。彼らに押しつぶされて踏まれてぶっ倒れちゃうジェニーに、会場では鼻をすする音が連発してました。今時ここまで堂々と王道を進んだのは、やっぱりずるいよ! 泣いたけど(笑)。

『ボードビリアン』
同じ貧困の時代でも、こちらは時代を遡って大恐慌のアメリカ中西部が舞台。当然現代のサブプライム問題の時代背景にかぶらせるアメリカ作品です。サーカスが解散して職をなくした腹話術師の主人公。道々、人形と今後の事を話し合うあたり、相当キてますが…人形が主人公の内面を代弁するというオーソドックスな仕掛けですな。ところが物語は悠長な方向ではなくけっこう緊迫してます。卵を盗みに入った農家で銃をつきつけられ、「動物と話す霊能者さ!」と、とっさにニワトリと会話して見せて難を逃れる主人公。すっかり信じ込んだ農夫から、いろいろ切実な話を持ちかけられて…完全な詐欺行為に「ヒトとしてどーよ」って突っ込む人形に対して、背に腹は代えられんと返す主人公。どっちも同じ人間の別側面であるわけですが、ラストは人形と決別した主人公を描いて苦い味を残します。ハリウッド的なハッピーエンドを求めない姿に、アメリカの今を見たか。あるべきインディペンデント映画の姿でした。

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