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I-Eインプレ

ドラマチックと銘打ったEプログラム。
今朝の予見どおり、イイモノの吹き溜まりでした。
上映はあと一回、見逃すなかれ(内容の衝撃度から、PG-15 と判断しますが)。

『自然の物差し』
鳥の親子が人間社会を崩壊させるまでのシンプルなアートアニメ…というのは誰かが言及するだろうし、まあいいや。エスねこ的に本作の特徴はロシアアニメだって事ですな! 多層のレイヤを持つ絵作り・配色の宗教的解釈、そういうロシアンアニメーションの伝統を否定して、シンプルで幾何学的なモノクロ線画の世界が展開されます。日本の商業アニメの流れを無視して活動し続ける山村浩二に近いインパクト。しかもこの手法を採用するのにはきちんと理由があって、製図板で描かれた幾何学図形がこのアニメ世界の基礎であり、同時に現実の建築物や工業製品の基礎でもあるのが、エンディングの一枚の画で明示されます。見た目とは裏腹に、工学的センスに裏打ちされた人間社会の図解でした。

『息子』
プログラムをちゃんとチェックしてなかったのがバレバレ。あのダニエル・マロイ監督の登場! 後でちゃんとレビューを足します。とりあえず、傑作。投票作。
●10日後のちゃんとレビュー
本作のモチーフを一言で表すと「迷宮」でしょうか。古城か修道院のような、石を積んで作られた中世風の地下のトンネルに電気を通して、劇場を作り、バーも、楽屋も作って、さらにそこで映画撮影までやっちゃうという世界。主人公の少年は映画の俳優ですが、この地下世界を牛耳る舞台監督の息子でもあります。さらには、父/息子の相似性から「実は同一人物の別表現」という線も見えるようになっていて、息子が見る父親と、彼が大人になってからの姿というのが圧縮されている。大林監督の『さびしんぼう』と同じです。語り口は真逆ですが…。
そしてこの2者の間には「母/妻」という異物が挟まっているわけで、彼女が動き始めると、この地下迷宮が俄然生彩を放って活きはじめます。そう、『シャイニング』のクライマックスと全く同じ盛り上がり方をして、「家庭迷路」を走り抜ける様がアイロニカルに、エキサイティングに、アクションの形で表現されます。キューブリックの名作と違うのは、この迷宮を支配しているのが「父=息子」だ、って点なんですが…。
ラストは映画が冒頭へ回帰し、繰り返しが始まります。場所は迷宮であり、物語に終わりはない。仏教的な解釈もできそうなくらい、無限に誕生を繰り返す生命の本質まで迫った「息子という複製された自己」を描いた意欲作でした。ただ、短編で描いた力量は凄いけど、やはり1時間以上ないと観客を納得させづらいんじゃないかなあ…オイラはもうすっかりハネケ慣れしてるんで、挑発的な記号類を読み解くのは苦じゃなかったですが…。

『不在』
留守番電話を小道具に使い、最後の音声録音場面から始め、後から全件再生するというアイデアで、オチが冒頭に来てしまうという一発ネタ。状況がわかってくるに連れ、戦慄のラストの輪郭がハッキリしてきます。ラストの長回しは大変にグー! みたいモノがビシッと見れた感じ。

『ファイナル・キック』
観光パンフの写真みたいなスイスの山奥の一軒家でサッカー中継を見てるわけですよ。ハイジの爺さんみたいなヒゲ親父がチロルハットかぶって(爆笑)。ところがスイスチームのキックが外れてゴール上空を高く高く飛んでいった…というナレで放送が切れてしまう。オッサンが外に出てみると、なんとサッカーボールがBSアンテナを直撃していた(再度爆笑)! そしてボールを地面に置いたオッサンは…日本だと10秒CMでやっちゃうんだろうなあ、こういうネタは。アルプスのノンビリ感が、けっこういい感じに出てました。

『罪の赦し』
携帯電話を効果的に使ったワンセットならぬ「2セット」もの。シンプルな舞台設定ですが、ダイアローグ主導の物語と、カット・構図の組み上がりが極めて知的な作品でした。ガン患者の女性の安楽死を巡って、彼女の《命の電話》担当者だったカウンセラー風女性と、安楽死させた夫が「罪の赦し」を巡って哲学、宗教、人生観と、さまざまな手腕を駆使して会話のイニシアティブを握ろうとする。人の生死・苦しみがかかってる以上、どちらも引けない。論理的に反撃が行われる時は、聞く側の表情をじっくり映し出し、電話が切られるとかして中断すると次の手を求めていろいろ逡巡する。絶対に諦める二人でない事は、表情の演技でしっかり裏打ちされてます。この、人生を覆いつくすような哲学的緊迫感はハリウッドやアジアには絶対出せない、欧州独特の専売特許ですな。

『1万枚の君』
おお、久々に来たよ! 実写コマ撮りアニメーション! 年々この手法は懲り方が凄くなってきていて、この作品では実写映像を中抜きでアニメーションさせると共に、その映像の中の雑誌や、DVDパッケージや、Tシャツのプリントや、PCのデスクトップなどで写真アニメがガンガン展開されます。論理もへったくれもなく実験実験、また実験と、思いもしなかった驚きの映像が満載。ドラマチックというのとは少し違うと思うんだけどね…。

『ネズミ狩り』
ネタバレします。
エクアドルの子供向け(と思われる)鬼畜映画。だが、真面目で真摯な鬼畜映画というところに、目を背けられない強烈な引力があります。山中の地方の村に、ゲリラ活動を展開する反政府勢力が訪れて食料を配っていく。もちろんただで配るなんてのは建前で、ゲリラになる人材スカウトをするってのが本音です。んで、主人公のアニータちゃん13歳。ちょっと大人びて活発な少女なんですが、弟がスカウトされそうになったところに割り込んで「私も行く!」と言い出しちゃう。このあたりでもう、日本の観客としては「やばいでしょ映画でそれやっちゃあ!」と気を揉み始めるんですがね、まだ甘い甘い。最初はトラックに同乗していろんな村に食料を配ってるアニータと弟ですが、やがて隊内から政府軍への内通者が出た。しかも同年代の子供だ。木に縛られて動けない彼らを、ゲリラたちは射殺していく。度胸を確かめるためにアニータの弟に銃が渡されますが、当然撃てない…そこでアニータが代わりにズキューン…「やるっすかそれを映画で!」ここの、観客の動揺する心を察して頂きたい。そっから後は、アニータもう一人前のゲリラです。ボスに呼ばれて小屋で二人っきりになり…「い、いかん、その展開はいかん!」…弟から地獄に落ちるの? と聞かれて、逡巡の末「さあね」と答えるあたり、さすがにアニータも参ってきてるんですが。そしてある日ゲリラの基地が襲撃される…内通者として槍玉に挙げられた弟と家族。アニータに銃が渡され、タイトルである「ネズミは殺せ」という過酷なセリフが…ここで究極の決断を引き出せないでいるアニータを大写しにして、エンドクレジットへ。この監督はパンフの写真で見ると白人女性みたいですが、本当に容赦がないっす。そして、彼女にそこまでやらせた怒り、というものは日本人には想像を絶している。おそらくこの作品、こういうのがあるとわかっただけでも収穫なんでしょう…。

『フリー・フィルム』
ぜーったいオーストラリア作品だ~! …と思ってたらアイスランド作品でした。いったい、このホノボノ味はアイスランドに根付いたモノなのか…? 話はまあ簡単かつ明瞭で、ビーチにバカンスに来た老夫婦が記念写真を撮ってるうちに燃え上がってしまい、プチ野外露出風の写真を撮っちゃうんですな。時代設定は70年代、まだデジカメなんてありませんから、ドキドキハラハラしながら写真を現像に出すわけです(笑)。これがうまく撮れてたもんだから二人は一気にバカップルと化し、人気のない森、深夜の路上などを徘徊! いたるところで露出写真を撮りまくる! …というのをホノボノ~と描いてます。んで、現像屋さんから呼び出しの通知を食らって恐る恐る行ってみると、なんとフィルムメーカーから「今月の当選者」の通知だったという…プレゼントにカメラとフィルムまでもらって、この無罰的・無毒的な物語は幕を閉じるのであった…この終わり方、投稿雑誌なんかが溢れかえる日本は取り返しがつかないほど心が汚れてるような気がしてきて、ションボリしちゃいます(笑)。

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