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F-Cインプレ

フィルムメーカー部門はまずF-Cから。
ベルギー・日本・フランスの、3人の監督が並びました。

●センヌ・デオンシュテール
技術力はあるけど玉石混交で評価の難しい人。ただ、最後の作品のあふれるパッションには、もう投票せざるを得なかったです。

『ファーテライズ(生の始まり)』
21世紀映像の悪いとこ満載! 映画界はケン・ラッセルという鬼才を忘れてしまったのか! …と本気で嘆きましたよもー。デジタル合成でなんか原始っぽい背景をバーンと広げといて、中央にはsドレスを着た美女、それを取り巻く数百人の半裸の男たち…まあいわゆる男女関係から受精までの多々のイメージ、エッセンスの凝縮なんですが。なんかこう、原始とかアニミズムとかいう記号に縛られまくり、内容が突き抜けないんですよね~。どの男性が姫のハートを射止めるかも、序盤で丸わかりだし…。

『未完成な過去』
戦争の傷跡を追う、演劇的な心理描写で構築された作品。デジタル合成で2~3シーンをひとつに束ねて、切り返しやらカットバックやら様々な映像手法を使って全てを3分に圧縮。技法的には凄いし、ドラマとしてのシチュエーションも迫力あり。だから、悪くはないんだけど、イマイチ納まりがよすぎて記憶に残らないような気が…。

『廃墟』
投票作。これはもうベルギーじゃない、チェコやハンガリーの痛い痛いユーモアの世界っすよ。エンボス、つうか白黒の線画状態まで加工しつくしたビデオ映像を使って、廃墟となった一軒家で互いを探し、求めあう男女を描きます。相手の名前を叫び、感情をむき出しにして階段を駆け上がり、廊下を走り、庭へ飛び出し…それと平行して描かれる、皿の上の肉料理&黙々と食べ続ける口元(カラーの普通映像)。両者の接点は…? これが後半、「老夫婦の現実と心象風景」だと明かされる瞬間、ググッと胸に迫るものがあります。心象が、過剰でドラマチックであるほど、現実の彼らは切ない。切なすぎる…音楽もかなり良かったです。劇伴のいい使い方、みたいな。

●照沼敦朗
ごめん、2年前のカスミX評なみに辛口だぞ。オイラは認めんな。
この監督、静的な画に対する思い入れは相当なもんなのに、動きに対してはてんで興味がないらしい。アニメ監督は、すべからく監督である以前にアニメーターであるわけで、生なきモノに生を与えるアニメートの秘術を尽くさない者に用はない。漫画家がお似合いのヒト。

『見えてる?』
『タイムライン』
両作とも、どうも戦争と国内世相が背景にあるようだけど、技術的に手を抜く場所が目立ちすぎ。クレイ人形が階段を登る場面、デジタル合成で済ます意図がわからん(あそこは心血注ぐべきでしょ~!)。

『見えたか?』
ちょっと主張を抑えて、物語風になった感じ。でも、やはりこの手の抜き方は認めたくないし、古風なアニメのように喋るキャラが画面の目立つ場所で口だけ動かしてる、ってセンスに脳が停止します…物体に生を与える場所を間違えている…というか、深い考察の結果ではないような気がするんだな。


●フレデリック・ベル
いかにも~なフランス監督。全編モノクロってところや、コントラストを効かせた点で、ヌーベルバーグをちょい思い起こさせる筋のいい監督です。でも悲しいかなインドシナ戦争やアルジェリア紛争の只中で駆動しつつ映画を作ったルイ・マルやゴダールとは違い、21世紀の新人監督には強烈なモチベーションはあり得ない。現実をソフトに切り取った、コジャレた感触が、逆説的に彼にはめられた《枠》を感じさせます。

『私の妻の断片』
剛直な男の生き様を切り取った、フランスらしいやりたい放題映画。入院中の愛妻に会いに行ったら死んじゃってました…という悲運炸裂な爺さんが、悲しみを超えて憤りに達し、全てを捨てて街を出て行く決意を固めた。ところが奥さんの死体処理の書類にサインをしないで病院を出ちゃったもんだから、警備員のゴメス君が追いかける羽目になって…あー爺さんバスに乗っちゃったよ。あ、ゴメス君も追いかけますか。トランシーバで上司から怒られちゃってまあ。というわけで、第1回で上映された『シスター』と同じ路線のバス映画となるわけです。バスの中の異様な光景(爺さんが奥さんのプレゼントを全部脱ぎ捨ててストリップ)と、外の日常がうまく対比されてます。最後、裸で蚤の市を歩く爺さんの気骨に、もう笑いを超越して圧倒されてしまったかも。

『警備員』
時系列的にはこちらが先かな。ゴメス君の初警備のエピソード。社長から「警防で人を殴れるか?」と問われて、しどろもどろなゴメス君。温和な彼が、イロイロあって人を殴れるようになるまでの、エスプリの効いたちょっとイイ話です。

『ルーム616』
ゴメス君第3弾。ついにこのシリーズで死者が出るか…? という緊迫した状況なんだけど、やっぱり監督はユーモアの人なんだなあ。フランスが得意とする、いわゆるバニシング・ポイントもので、カットバックされる3つの視点が最後の最後で皮肉に結びつく。でもまあこの話、ハッピーエンドなのかどうなのか微妙なんですが…。

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