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樊噲排闥賞2008

やって参りました。
当ブログの勝手賞「樊噲排闥賞」の発表です。

作品賞:I-D『S.I.T.E.』
企画賞:I−E『ネズミ狩り』
監督賞:I−C『ナイトビジョン』
特別賞:チルドレンB『雨の中のキリン』

以下、選評。

作品賞:I-D『S.I.T.E.』
20世紀が「映像の世紀」だとすれば、21世紀は「VFXの世紀」だと言えるでしょう。加工のない、嘘のない映像はどんどん駆逐され、希少になっているのが今世紀の現状です。『S.I.T.E』は来たるべき特撮映像の姿を垣間見せてくれました。前世紀においてもネス湖の恐竜、捕獲された宇宙人等、様々な加工映像がありました。しかし、我々の世界観を揺るがすようなトリック映像は、今後もさらに発展していくと思われます。本作はストーリーを排し、キャラクターも排して映像が持つ奇抜さのみを追求した作品として、2008 年現在の創作の先端を、そしてさらに創作の未来を観せてくれた事に大いなる感動の想いを禁じ得ません。

企画賞:I−E『ネズミ狩り』
短編の劇映画によってしか語り得ない事象があるとすれば、まさに本作が描く世界だと言えます。観客を当事者の心情に深く入り込ませ、対象から一歩引いたドキュメンタリー形式ではなく、事情の異なる数多くの国々で安価に上映・放映する事ができ、そしてその枠組みの中で、ある地域が陥っている(他国にはわかりようのない)致命的な病弊を告発する。この意味において本作は極めて強いメッセージを持ち、卓越したアクターを配し、計算されたカメラワークでエクアドルの現実を圧縮したものと受け取りました。最後のシーンの、震える手持ちカメラによる撮影では、観客の目も不動の視点をなくしてしまいます。そこにはどんなドキュメンタリーでも到達できない、それ以上のものが映し出されていました。地球の裏側の一観客でもこの作品に触れられるという事こそ、短編映画メディアが必要とされ続ける理由の一端だと確信しています。

監督賞:I−C『ナイトビジョン』
人に内在する不条理は、外面からどれだけ合理的に解釈しようとしても明らかにはできないものです。その事実を素直に認めて不条理に立脚し、しかしパトスの乱舞する世界ではなく、静かに内観を行った本作には、人間の心が持つ豊かさや広さ、そして逆の意味での視野の狭さが観て取れました。

レビュワー特別賞:チルドレンB『雨の中のキリン』
ユーモアには、正視できない過酷な現実を見つめさせる偉大な力があります。文化の異なる人々の間に、共通の感情を呼び起こす橋ともなります。本作はそのユーモアの技法によって、多数の難民が直面している現実の問題を、様々に異なる立場の観客、性別も年齢も考え方も異なる観客へ植え付ける事ができる素晴らしさを持っていました。パリの雨の中で濡れている難民ではなく、キリンを配した事により、より伝わりやすく、焦点が明確で、親しみやすいものになったからです。キリンという記号は、その実体以外にも様々な概念が付加され、スクリーン上に存在しています。その記号を扱うのがアニメーションの本領だとすれば、ここまで見事に難民が背負った背景事情を画面へ表出させた作品を、寡聞にして知る事がありませんでした。本作は短編でありながらも実写では扱うことのできない多数の情報を埋め込んで、中編・長編に匹敵する意味世界を構築していたと思います。

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