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飛ばねえバカはただのバカ

タイトル意味なし! ちょっとだけあるかも…。
いきなり師走になっちゃった感があるけど、なにはともあれ、2006年という年を映画イベントで振り返ってみるかな。

1)『王と鳥』再公開
ジブン的には重たい出来事だったので特には語りませんでしたが、今年の最大の事件は何と言ってもコレでした。ジブリスタッフによる今回のリマスタリングで、このグリモー翁のライフワークが発表時より古めかしくなっちまった。明らかに何かを履き違えているブラッシュアップ。
でもね、オイラに金と才能が有り余ってて、同じ作業がやれたとしたら、やっぱり同じモノを作ったと思うんですね。それくらい、心から望んでいた方向の修正でした。そして、その作業ぶりからスタッフの哲学や感性が透けて見えてきました。彼らはきっと泣きながら作業したに違いない。泣かないまでも、重たい気持ちで作業したに違いない。なぜなら、グリモーが新作版で後から付け足した部分は、楽しくないから。面白くないから。何かを失ってしまっているから。
その「それがないからと言って作品自体の評価を貶めるわけではないが、『暴君』ファンとしてとても大事だった何か」が欠落してしまった事へのガッカリ感というか、一種の虚しさが伝わるんです。その意味では宮崎駿もオイラも、グリモーの手の上で踊っていたアニメ亡者だった。『やぶにらみの暴君』に触れてしまったがために呪われてしまった、とても微妙な感情を引きずり続ける奴隷だった。
でも、そこから逃げ出す事はできないまでも、その感情を神へぶつける事はできる。愛情と、畏敬と、子供っぽい悲しみを込めて…それが、このデジタル新版の『王と鳥』の、隠された意味だったんじゃないかナと思います。『やぶにらみの暴君』の著作権が切れるまで、あと35年。その時までは、今回の《念》のこもったバージョンが正規版であり続けるでしょう。
結局、そこかしこで「宮崎駿は見ない」と語ってきたオイラですが、グリモー翁の元では同じ穴のムジナである事を再確認する結果に終わってしまいました。いや…言葉にはできないくらい微妙な、奥底の部分で、「繋がってしまっている」と感じている…そう言うのが正解かな。
今後、彼の作品を少しづつ観るようになるだろうと思います。リチャード・ヒューズの『ジャマイカの烈風』ももう一度読み直すか(笑…一度会う事ができたら、是非とも聞いてみたいですね、「宮崎さん、あなたは結局リチャード・ヒューズを認めるんですか認めないんですか?」って)。

2)ミヒャエル・ハネケまつり
正直この監督は去年まで存在すら知らなかった。でも、『隠された記憶』を観て以降、完全に映画に対する接し方が変わってしまいました。映画とは娯楽である、映画は観客のためのものである、映画は舞台と違ってライブではない…そういうお約束を逆手に取った、作品を観るという行為自体に仕掛けられた底意地の悪い罠。
この作品をレビューする事自体が物語に含まれてしまうという、ネット時代ならではの真の意味でのメタフィクション(ただし一発ネタくさい気はしますが)。
映画評を書く、という事の別の側面に気付かせてくれた監督でした。

3)札幌国際短編映画祭
ハネケの影響下で映画への嗜好は確実に変化しました。普通ならスルーしていたはずの札幌国際短編映画祭ですが、仕事を切ってまで全作鑑賞・全作レビューという暴挙をやってしまった(なのでいまだに貧乏してますが…)。
とにもかくにも短編映画の価値に気付かされたイベントでした。毎日が楽しかったし、商業作品でない事の方が昨今では良品の証拠であるのも知った。「作りたいから作る」「上映したいから上映する」「観たいから観る」。この3つの要素が重なった空間は、無敵のお祭になります。そこにはカケラほどの義務感があってはいけない。ある程度お金がかかるのは仕方がないけど、お金の事を考えてもいけない。ただただ、観て、感動して、場内で声を上げて笑い、名シーンには惜しげもなく拍手しました。これほど純粋な気持ちで映画を観たのは、生まれて初めてだったかも。

4)ひとり河崎実まつり
そんなこんなでアート系映画までドップリと手を染めておきながら、本来の立ち位置に強引に引き戻されたのが秋の『日本以外全部沈没』『ヅラ刑事』。天下に恥じる事ばかりのバカ映画。
『えびボクサー』以来、ここ数年でバカ映画というジャンルはすっかり定着した感がありますが、オイラ的には『イシュタール』『ハドソン・ホーク』のようなバカ映画を観たいワケであって河崎実は全く視野に入れてなかった。
それが覆った、重要な年だったと思います。バカ映画でしか扱えない真摯なテーマというモノがあり、実はそれは大昔の怪獣番組で既にルーチン化されていて、いま、実相寺という名監督(下品ではあるが)を通して河崎実へ受け継がれた。そのギリギリのタイミングで産み出された『日本以外全部沈没』は、「語ってはならないものを語る」というジャンルがまだしっかり生きている事を教えてくれました。そのジャンルの名は、SF。

5)小アニメ大爆発
《小アニメーション大感激祭》と、同時期に札幌に来ていた『年をとった鰐』。一週間足らずで50本近いアニメを観た結果、脳がパンクしました。
いつのまにか中学生がいっぱいアニメを作る時代になっていたのを実感。過去の素晴らしい作品をまだまだいっぱい見逃しているのも実感。そして自由度の高いアニメだからこそやれる、構図や時間感覚無視の画面に舞い散るようなノーマン・マクラーレンの技を堪能できたのもこの時でした。『色彩幻想』は多分、一生忘れられない作品になるでしょう。

6)『kuromame』にハマる
お菓子系毒ピングーと呼びたくなるようなクレイアニメ『kuromame』。『小アニメーション大感激祭』で出会い、自主上映にも行った。ファンがどれだけ増えてるかは推測の域を出ないけど、どうやら市内の映画館での上映にもこぎつけたようだ。
この作品の独特のセンスは、まだ磨かれてないとはいえかなりイイモノです。まあオイラがクレイ大好きってのもありますけど、微妙に毒を含んだ可愛らしさは、海外のクレイ作品にはナカナカ望めませんぜ。
ハインツ逆さケチャップCM評価も手伝って、着々と地歩を固めつつあると思われるので、そろそろ新グッズ展開を楽しみにするフェーズに入りますかねー。

7)『こまねこ』にもハマる
先行上映会に行っただけで、結局まだ本上映に行けてないですが、『こまねこ』は凄かった。技術力が圧倒的な上に、過剰なほどの「愛」がある。ここまでの愛はかえって毒です(笑)。アルバトロスらしくていいんですが…。
DVD(本編5分ってどうよ)も買ったし、サントラ(30分ってどうよ)も買った。職場に連泊してた1ヶ月間、ネット配信には何度も癒してもらった。
欲を言えば、『こまねこ展』は東京だけで終わらせないでほしい…。

8)SF魂の注入
春に公開された『イーオン・フラックス』。SFを読み慣れた人間にはヴォクトのような激しい展開やベスターのような嘘っぽさ、ヴァーリイもかくやのバイテク社会、ジーター的な絶望エンディング(ハリウッド映画なので逃げは打ってあるけど)…もう、端々で「あ、わかってるネ」というのが読み取れる、SFのエッセンスを濃縮したような作品でした。
いやまこの世には『2001年宇宙の旅』とか『サイレント・ランニング』とか、マジメなSF映画もあるワケですけどね。虚構世界を足場にしたSFってモノの真骨頂は、こういう《ワイドスクリーン・バロック》な風味なんですわ。知らない人はどーでもいーかもしれねーけどな。
ここまで魂の入ったSF映画には、いまだかつてお目にかかった事がない。DVDが出てから一度観直してますが、小画面でもそれなりに楽しいのでオススメです。
というかヴォクトやベスターやジーターやハミルトンやドック・スミスが好きなSF廃人は絶対見逃さないように。

9)SF魂の破壊
他方、長年待ち望まれていた『銀河ヒッチハイク・ガイド』がようやくDVD発売。アメリカ黄金期のSFを模した『イーオン・フラックス』とは真逆の、原作のテイストそのままなブリティッシュ・ジョークSF。ナンセンスな展開は多少大人しくなって、ロマンスの要素が色濃くなりました(原作者ダグラス・アダムズの映画化構想が、そういう感じだったらしい)。
当然、原作の終わりのような、観客の予想の裏の裏の裏の裏をかいたようなありえないエンディングではなくなり、見事にハッピーエンド。娯楽大作。それでもオイラは愛してるよマイハート。長い長い時間を待ち続けて来たのさ~♪

10)ヤン翁、お悔やみ申し上げます…
ヤン・シュヴァンクマイエルの妻にして美術担当、エヴァ・シュヴァンクマイエロヴァが死去(は去年ですが)。今後の作品は一人で作る事になるワケだけど、とりあえず『ルナシー』来てくれよ~!
一人になった寂しさが、翁の場合は芸術に昇華するらしく、『ルナシー』は独身男性の妄想を具象化してるそうな。フィルモグラフィ的には80年代後半の残酷クレイアニメ『男のゲーム』の発展形か? …と期待してるんだけどねー。『悦楽共犯者』系ってのもあり得るからなあ。
何にしても札幌まで来てください。観ないと始まらん…。

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コメント

明けましておめでとうございます。
エスねこさんに教えてもらった「こまねこ」を
娘共々楽しみにしています。
(地元で上映があるかちと心配…)
今年もよろしくお願いします。

投稿: のはら | 2007.01.01 19:32

ちわす。
えー、とりあえず緊急連絡ですが、敬ベンは行く価値ありません。DVDでおっけーです。クローズアップばっかりで、大画面の必要性ないんだもん。ただ、のはらさんがベートーベンへ感じてる(であろう)様々な事を、容赦なく本人へ叩きつける内容なので、ピアノやってる人にはけっこう快感あるかもですぜ。
『こまねこ』は…埼玉の劇場も一応いくつかリストアップされてるような…マイカルばっかだけど…。あと、ネット配信されてる「はじめのいっぽ」と残りのエピソードはアニメーターさんが違いまして、ちょっとタッチが変わります(でもハッキリ言えば新作部分の方が丁寧)。

ってなワケで今年もよろしくお願いします。
映画の鑑賞数は減る予定ですが…。

投稿: エスねこ | 2007.01.02 00:06

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